三日月てんびん_01_みかづき

君と僕の関係は、

とてもシンプル。


君が浮かぶと、

僕が沈む。


そして世界は、

崩れ去る。



この世界を

紹介しよう。


頭の中に

描いてほしい。


広く

深い

宇宙にひとつ、


銀色三日月を

ゆりかごみたいに

傾けて、


その両端に

小さなお皿を

据える。


かごの真ん中には

小さな惑星を載せ、


それぞれのお皿に、

彼と僕を

載せる。


人々の住む

小さな惑星は、

『シルバームーニープラネット』


遥か昔、

ある学者は、


歩けば

一週間足らずで

巡れてしまう

彼のセカイが、


三日月の中心で

静止していることを

知った。


その少し後、

次代の学者は、


彼のセカイは

止まっているように

見えて、


実は

小刻みに

揺れ、


崩れ落ちないように

バランスを

とっていることを

知った。


そして

つい最近、


そのバランスは、


銀色三日月の

両端にある

何らかの調整機構により

保たれている


ということが、


現代における

天文学者の総意として

発表された。


人々の

認識する

『セカイ』は

少しずつ、


しかし

確実に、


この世界の

真実に

近づいている。


僕は

そんな人々を

端っこから

見守りながら、


慎ましやかに

日々を

過ごしている。


流れ星と

お話ししたり、


宇宙に関する

書物を読んだり。


悠々自適な

生活をしているように

聞こえるかもしれないけれど、


もちろん

仕事もしている。


とても

大切な役割。


それは

守るべき人々を

銀河に流してしまわないよう、


反対側の彼と

息を合わせて、


世界の

バランスを

とることだ。


例えば


彼が寝ている時には

僕も座って

読書をしたり、


彼が立ち上がり

歩き始めたら、

僕も少し

散歩する。


静には静、

動には動。


バランス保持の

基本原則だ。


彼は少し

自分勝手なところがあるので、


大抵は僕が

彼の行動に

合わせる形になる。


まあそれは

僕にとって

それほど苦ではないので、


今のところ

大きな乱れも無く、


三日月天秤は

平衡状態を

維持している。


彼と僕の

均衡は、


世界の安定を

意味する。


そして


禁忌は

その反転だと、


そんなことは

今更、

言わずもがな。


それは

暗黙の了解として、


僕らの間、


つまり

世界の真上に横たわる

星空に、


とっくの昔に

溶かしてある。


+++


最初の学者が

彼のセカイに


”銀色三日月に照らされた惑星”


という名を

プレゼントした

ロマンチックな出来事よりも、


もっと

もっと


遠い昔。


それは

宇宙が

産声をあげた頃のこと。


僕らは


自身の未来と

この世界、


ふたつに

ひとつの

選択を

迫られた。


当時、


彼の思いは

前者に

決まっていたんだけれど、


どうしても

世界を

捨てきれなかった

僕の主張に折れ、


僕らは

それぞれの天秤皿に

身を投じた。


世界を、


多くの命を

背負うことを

誓って。


たった一度、

遠い昔の

古びた

約束だけれど、


それは

今まで


固く

固く

守られてきた。


そして

これからも、

この日々は

続いていく。


そう思っていた。


三日月てんびん / IROKACOLORIS

イロカクロリ -creator iroka's portfolio

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